古希+3の手習い  その2.水墨画の流れと魅力

長く生きておりますと楽しいことがいっぱいです。 

「お化け」にとてもよく似てまいります。

外見ではありません。

双方の置かれた環境や行動パターンがともかく似てくるのです。

水木しげるさんの『ゲゲゲの鬼太郎』の歌を思い出してください。

[るんるん]ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲ~

朝は寝床でグーグーグー

楽しいな 楽しいな おばけにゃ学校も

試験も何にもない~

ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲ~

みんなで歌おうゲゲゲのゲ~

(2番も同じです。)

[るんるん]ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲ~

昼はのんびりお散歩だ~

楽しいな 楽しいな お化けにゃ会社も

仕事もなんにもない~

(後略)

3番は、あちらに行ってからのお楽しみ運動会ですから略します。

2.jpg
 東京池袋で開催された「GeGeGeの水木しげる大妖怪 体感型展覧会」より
 ◆

自由には、何もしなくていい自由と

何でもしていい自由があります。

わたしは、後者を選択し、きょうも走り回っています。

きょうは、水墨画って何さっ?を

少し硬い文体で語ってみたいと思います。

衒学的と思われるかもしれませんが

①拙い絵しか描けない恥を

②拙い文章を書くことで補う

まさに恥の上塗りです。

 その2. 水墨画の流れと魅力 

 社会人になってから自分は水墨画の名作を社費で鑑賞できた。

選んだ会社が関西の私鉄系観光会社だったからだ。

今なら美術館巡りのツアーなど珍しくない。が、当時はなかった。

名所旧跡・寺社巡りが主だ。

京都、奈良などの寺院めぐりに行けば、

襖や掛け軸に描かれた多くの大和絵や山水画に接することができる。

いつか自分も描いてみたいという気持ちを持ち続けてきた。

書架を整理するたび、多くの書籍を処分したが

日中国交回復直後に上海で買い求めた分厚い山水画集をはじめ

水墨画関連の本は捨てきれず残していた。

これが今役立っている。

「鹿柴」申二伽・画〈詩与画 唐詩三百首〉.JPG

画と漢詩は唐の代表的詩人で画人、王維の「鹿柴」申二伽・画〈詩与画 唐詩三百首〉より。

Kanshi61S.JPG

人かげ見えない山のなかに
ただざわめきが聞こえてくる
日没の光がかすかに
青く苔むす上に照っている
(註:暁烏の現代訳)

北宋の蘇東坡は、著書『東坡論山水画』で次のように記している。
 「王維の詩を味わう、詩中に画あり、王維の画を観るに、画中に詩あり。」・・・と。


 水墨画は、絵画の三要素である輪郭線、濃淡の調子、色彩のうち、

一番視覚的刺激を受ける色彩を極力加えない画風だ。

最も特徴的なところは皮相(うわべだけを見てそれだけで判断すること)を破って、

内面的に精神を集中し本質を見極めるところにある。

これは東洋哲学の仏教に通じる。

仏教では人間の生死往来する世界を

欲界、色界、無色界の三界に分けて解説している。

そのうち欲界は、欲望に満ちた生き物の住む世界.人間界などのことをいい

色界のもっとも低い区分とみられるものだから

重要な区分は、色の有無を境として、色界と無色界の間にある、

といえるのではないか。

色は、人間の諸欲、精神の自由を邪魔する一切の感覚的、肉体的、物質的なものを意味する。

一方、無色界は物質を超越した空の世界だ。

いいかえれば精神の世界なのである。

ちょっと堅苦しくなったが、仏教における色の解釈は、

人間の持つ色彩感覚が人の心まで左右してしまう心理を

人情の機微に触れて巧みに説明したものだろう。

     
つぎの特徴は、滲み(にじみ)や暈(ぼか)しの美しさである。

油彩で塗り重ねていく西洋画と違って

水に溶ける絵具(墨・顔彩)を用いているためにしかできない技法である。

山水画発祥の地、中国ではこの技法(滲みや暈し)は発展しなかった。

墨の象形(画)は、北宗(厳しい自然環境の地で描かれた急峻で険しい山水画=北画)から

南宗(湿潤で温暖な地に芽生えた南画)に移り、

日本に渡ってからは、風土に見合った柔らかな表現として

にじみやぼかしが加わって奥行きを広げた。

なぜ滲みやぼかしの技法が生まれたかについては、

どうも日本に古来からあった

「布地の染色技術」が影響しているようである。

日本の水墨画は、仏教・特に禅宗と結びつき

独自の水墨画に発展し今日に至っている。

雑駁ではあるが水墨画の魅力と特徴、流れなどを並べてみたが、

道元がいう禅の神髄・「只管打坐」(しかんたざ)※と同様、

「只管打画」が今の自分に与えられた時間かもしれない。

[サッカー]

注釈:只管打坐=雑念を払い「ただひたすらに座禅を組む」こと。

 ◆水墨画について本当のところは何もわかっていない門外漢のわたしが、高慢な文体で2度も記したけれど、この世界は奥が深く書き始めたらきりがない。たとえば、水墨画と一口に言っても日本では、墨絵、墨画、墨彩画など呼び方がまちまちである。発祥の地・中国や韓国・朝鮮では、「水墨画」というジャンルで定着しているのと比べると奇異である。また、画と絵の違いはなんだろう? との疑問もわいてくる。次の機会にこの辺りをわかりやすく述べてみたい。

この記事へのコメント

  • リュカ

    面白く読ませていただきました。
    画と絵の違いも楽しみです^^
    2016年10月03日 13:44
  • green_blue_sky

    歳を重ねると、洋画よりも水墨画のほうが落ち着いて観れます。
    2016年10月03日 18:45
  • 夏炉冬扇

    水墨画、いつかぎゃらりぃでやってみたいです。
    2016年10月03日 19:01
  • green_blue_sky

    2日はディズニーランド沖などのヨットを目撃しています(^_^;)
    帆走されていたんですね(笑)
    お互いに近くにいましたね。
    2016年10月04日 17:11
  • 暁烏 英(あけがらす ひで)

    green_blue_skyさん
    先週の日曜日は、夢の島マリーナのお祭りだったのです。
    陸上(マリーナの催事用ステージ)では、フラダンスや美人コンテストなどをやっていましたが、マリーナ所属艇の多くはゲストを招待帆走していたのです。
     ぼくらは、申し込みが遅れたため、個人的に浦安マリーナまでのランチクルーズを楽しんでいました。次回は予告してご招待しますよ。
    2016年10月06日 10:34
  • DANKAI_Gen

    おいらはどっちかっていうと前者。何もしないかな。
    前職でのことがつながっているとは幸せなんですかね。
    水墨画 確かに塗り足していく技法とは対象的に線も面も一発で決める。目と手と精神状態が一体化していないとできない技。
    2016年10月06日 14:22

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